GM、エスカレード生産をテキサス州アーリントンからミシガン州オリオン工場へ移管



ゼネラルモーターズ(GM)は、フラッグシップSUV「キャデラック・エスカレード」の生産拠点を2027年にテキサス州アーリントン工場からミシガン州オリオン工場(デトロイト近郊)へ移転すると発表しました。これは約43.5億ドル(約6,400億円、1ドル=147円換算)を投じた全米生産体制再構築の一環であり、消費者のSUVやガソリン車人気の根強さと国内生産の強化を背景としています。

▼アーリントン工場の役割と地元経済への影響

アーリントン工場はこれまでエスカレードのほか、シボレー・タホやサバーバン、GMCユーコンなどGMの主力SUVの生産を担ってきました。エスカレード移転後も、これら量販モデルの製造は継続され、約5,200人の雇用やシフト体制は維持される見込みです。地元の政府や企業からは雇用や生産台数への影響は限定的とのコメントが寄せられており、今後はタホやサバーバンの生産に集中することで、より効率的な工場運営が期待されています。

▼ミシガン州オリオン工場での新展開

オリオン工場は現在設備の刷新を進めており、2027年からはエスカレードのほか、シボレー・シルバラードおよびGMCシエラのライトデューティ・ピックアップトラックも生産する計画です。もともとはEV専用工場への転換が検討されていましたが、ガソリン車の需要動向を踏まえ、柔軟なライン運用へ方針が変更されました。GMは「消費者ニーズの変化に柔軟に対応する生産体制を構築する」と説明しています。

▼米自動車産業の変化とアーリントンの今後

EVシフトがやや減速するなか、米国内ではガソリン車・ハイブリッド車への需要が引き続き堅調です。GMはミシガンだけでなくカンザス州やテネシー州など国内の複数工場に投資を広げています。アーリントン工場はSUV量販モデル生産の集約により競争力を維持しつつ、地域の雇用と経済への安定的な貢献も期待されています。



▼アーリントン工場と地域

アーリントンはテキサス州ダラスとフォートワースの間に位置し、人口40万人を超える工業・観光の重要都市です。GMのアーリントン組立工場は1954年に開設され、約5,200人の従業員が勤務しています。同工場ではシボレー・タホ、サバーバン、GMCユーコン、キャデラック・エスカレードなどの大型SUVを生産し、2013年以降は約21.7億ドル(約3,200億円、1ドル=147円換算)を設備更新に投資。2024年にはさらに5.4億ドル(約800億円)の追加投資が予定されています。2023年3月には過去70年間で最多となる月間3.4万台の生産記録を達成しています。

また、アーリントンはメジャーリーグベースボールのテキサス・レンジャーズ本拠地「グローブ・ライフ・フィールド」やテーマパーク「シックスフラッグス・オーバー・テキサス」といった観光施設も充実した活気ある都市で、今後もGMの主力SUV生産拠点として地域経済と雇用の要となる場所です。

▼今後の展望

今回のキャデラック・エスカレード生産移転は、米自動車業界の変革期を象徴する動きです。GMは変化する市場環境に対応し、アーリントンとオリオン両工場の役割分担を最適化して競争力強化を図っています。これらの動きは米国内の自動車製造拠点の未来を形作る重要な一歩と言えるでしょう。

参考記事:GM to move Escalade production from Arlington to Michigan

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