巨大テキサス・データセンター計画が進展、Stargate AIプロジェクトに疑問も



2025年7月29日 アメリカの人工知能(AI)インフラの急速な変化を背景に、注目を集めるStargate AIプロジェクトは、テキサス州アビリーンで巨大データセンターの建設を着々と進めています。ただし、計画の規模や進行速度、戦略に関する議論や不確実性も続いています。

▼Stargateのテキサス拠点:前例のない規模と野心

Stargate AIキャンパスはアビリーンの5502スピンクスロード付近に位置し、約2,300エーカー(約9.3平方キロメートル)という広大な敷地を占めます。今年初めに発表された5000億ドル規模のStargateイニシアチブの一環で、OpenAI、オラクル(Oracle)、ソフトバンクが支援し、トランプ元大統領が発表した大規模プロジェクトです。

このサイトでは最大20棟のデータセンタービルが建設され、1.2ギガワット(GW)の電力供給能力を持つ予定です。これは約75万世帯以上の電力を賄う規模に相当すると見られています。2025年7月現在、200メガワット分の電力設備が稼働し、オラクルは先月にNvidiaの最新AI向けGPU「GB200」のラック設置を開始しました。

キャンパスは最先端AIアクセラレータを数十万基収容可能で、風力、太陽光、電力蓄蔵システムと天然ガス発電を組み合わせた独自の電力供給体制を持ちます。さらに、大容量送電線や変電設備の新設も進み、電力網の安定確保が図られています。

▼プロジェクト規模と提携に関する疑問

一方で、Abileneの建設進捗はあるものの、プロジェクト全体に対しては疑念もあります。最新報道では、OpenAI、ソフトバンク、オラクル間でサイト展開の計画や資金調達方針で対立があり、当初の目標規模を縮小する方向にあると指摘されています。ウォール・ストリート・ジャーナルは、2025年の目標をオハイオ州の比較的小規模なデータセンター完成に切り替えた可能性を報じています。

それでもOpenAIとオラクルは、新たに米国内で4.5GW分の拡張契約を発表し、今後数年で10GW規模を超える見込みだと述べています。



▼経済・電力網への影響

Stargateキャンパスは技術面だけでなく、西テキサス地域経済にも大きな影響をもたらすと期待されています。OpenAIとパートナーは、全国の建設・運営段階で10万人以上の雇用創出を見込んでおり、すでにアビリーンでは地域雇用が拡大しています。

一方で、1.2GWもの電力を単一施設に供給する規模は前例がなく、テキサス州電力網(ERCOT)や政策担当者にとっては大きな課題です。信頼性確保のため、高度な電力管理、蓄電設備の導入、オンサイト発電が必要。この巨大AIデータセンター群の増加が国内電力インフラに与える影響は今後の重要な論点となっています。

▼アビリーンについて(Abilene)

アビリーン(Abilene)はテキサス州北部に位置する人口約12万5,000人の都市で、交通の要所として発展しています。歴史的に鉄道と牧畜業で栄え、現在は軍事基地や教育機関が地域経済の柱です。自然環境や文化施設も充実しており、生活の質と地域経済の持続的成長に貢献しています。

▼今後の展望

Abileneのキャンパスは建設が進む一方で、Stargateの全体構想はまだ流動的です。米国内に他のデータセンター建設も計画されていますが、スケジュールや場所は変動しています。財務面やパートナー間の調整といった課題も依然残っています。

巨大な可能性と大きな不確実性が共存するこのStargateプロジェクトは、AI産業、エネルギー政策、産業政策における新たな最前線を象徴しています。

参考記事:
Huge Texas data center moves ahead as Trump-backed Stargate AI project faces questions

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