テキサスに集まる富裕層 - カリフォルニアのビリオネア税が生む「資産移転」の現実
/カリフォルニアで検討が進む「ビリオネア税」をきっかけに、超富裕層やテック起業家が資産や事業拠点を州外へ移す動きが加速しています。その主要な移転先の一つが、州所得税ゼロでビジネスフレンドリーなテキサスであり、今回のラリー・ペイジ氏の事例は、その象徴的な一コマと位置づけられます。
カリフォルニア「ビリオネア税」とは
カリフォルニアで構想されている「2026 Billionaire Tax Act」は、純資産10億ドル(約1,500億円)超の個人に対し、一度限り5%の資産課税を行う内容とされています。
対象:2026年1月1日時点でカリフォルニア居住のビリオネア
税率:純資産の5%(例:資産200億ドルなら10億ドル)
税収の使途:医療・教育・食料支援など、州の社会プログラム財源として約1,000億ドル規模を見込む構想とされています。
問題視されているのは、「基準日(2026年1月1日)にさかのぼって課税対象を決める」という設計で、この情報が広まった2025年末以降、富裕層が年内に州外へ出るインセンティブを強めたと指摘されています。
富裕層の典型的な対策パターン
こうした一時的な資産課税の動きに対し、ビリオネアやその顧問たちはいくつかのパターンで対処していると報じられています。
個人の居住地をフロリダやテキサスなど州所得税ゼロの州へ移す
事業会社や投資ビークル(LLCなど)の本店所在地をデラウェアやテキサスに変更する
株式や非公開持分の評価・移転タイミングを調整し、課税時点での「カリフォルニア居住」を避ける
支持派は「一度だけでもフェアシェアを負担させるべき」と強調する一方、批判派は「資産と雇用を伴って逃げられれば、結果的に税収も経済も失う」として、過度な富裕層課税の副作用を懸念しています。
ラリー・ペイジのケース:AI企業と拠点移転
Google共同創業者ラリー・ペイジ氏は、この文脈の中で象徴的な存在として取り上げられています。
AI企業Dynatomics LLCは、カリフォルニア・パロアルトでオフィスを確保しつつ、本社登記をテキサス州ケラーの住所へ移したと報じられています。
ペイジ氏個人は、フロリダ・マイアミに約1億7,300万ドル(約260億円)規模の邸宅を購入するなど、生活・資産の重心をカリフォルニア外へ移しつつあるとされています。
一部のカリフォルニア富裕層や政治家は、こうした動きを「ビリオネア税を避けるための露骨な税逃れ」と批判し、「sickening, greedy(病的な強欲)」という厳しい言葉も投げかけています。 一方で、税務・資産管理の専門家は「この規模の一時課税が議論されれば、資産防衛策を取るのは予測可能な反応」と冷静に分析しています。
テキサス側の受け皿としての役割
テキサスは、こうした「ビリオネア税回避」の動きの受け皿として、ここ数年存在感を増しています。
税制:州所得税ゼロ、法人課税も比較的有利で、規制もビジネスフレンドリー
産業:オースティンやダラスではテック、AI、データセンター投資が増え、VCやスタートアップ、上場企業の拠点移転も相次いでいます。
事業登記:Dynatomicsのように、本社登記だけでもテキサスに移すケースが増え、実務上の「法人の住所」としての吸引力が高まっています。
テキサスにとって、こうした流入は
高度人材・高所得者の増加
企業投資と雇用創出
不動産・商業開発の需要増
といった面でプラスに働く一方、「税制優位で呼び込んだ富裕層と、地元の住宅価格高騰・格差のバランスをどう取るか」という新たな課題も生まれつつあります。
テキサス視点:AIと富裕層移転がもたらすチャンスと課題
テキサス側から見ると、カリフォルニアのビリオネア税構想は、AIやハイテク分野の創業者・投資家を呼び込む「追い風」として作用しています。
ダラス・オースティンなどでは、AI関連スタートアップとデータセンター投資が加速しており、Dynatomicsのようなケースはその一例にすぎません。
ウォール街系金融機関やテック大手もテキサス拠点を拡大しており、「Y’all Street」「次世代テックハブ」としてのブランドが強まりつつあります。
カリフォルニアとテキサスの税制・規制の差が、どの企業・産業がどこへ向かうかを左右する
AI・クラウド・フィンテック系企業がテキサスを選ぶほど、ダラスやオースティン周辺の雇用・不動産・スタートアップ環境が厚みを増す
という点を意識しておくことが重要です。 今後も「課税強化の州から、税制優位な州へ」という動きは続く可能性が高く、テキサスはその最前線にいると言えます。
参考出典:San Francisco Business Times The Real Deal The New York Times CNBC Yahoo/Business Insider
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