ダラス住宅価格5.4%下落の背景



2025年10月のRedfin最新レポート(Redfin(レッドフィン)」の都市別住宅市場データ(2025年10月19日までの4週間分)によると、全米主要都市の中でダラスの住宅価格は前年同期比で5.4%減少し、全米最大の下落幅を記録した。一方で、全米平均価格はわずかに上昇しており、ダラス市場が特に減速している点が注目される。

▼金利低下でも回復鈍化

10月中旬時点で平均30年固定ローン金利は6.17%と、過去3年でほぼ最低水準にまで下がった。これにより月々の住宅ローン支払額は前年からほぼ横ばいの2,556ドルに抑えられ、購買力は上昇している。しかし、住宅購入希望者の動きは依然として鈍く、成約件数は前年より0.7%減少。価格下落にもかかわらず買い手が様子見を続けている。

▼価格調整の背景

ダラス市場の調整要因は複数あり。第一に在庫の急増である。Redfinによると、アクティブ物件数は前年比7.1%増。さらに地域分析ではダラス単独で22%の在庫増加が確認されており、供給過多が価格を押し下げている。

第二にローン金利が下がったとはいえ依然6%台であり、多くの買い手にとっては手の届かない水準が続いている。第三にインフレ懸念と景気不安。政治的緊張や不況リスクが高まる中、大きな住宅購入を控える心理が働いている。



▼地域差と実需動向

ダラス北部では特に値引き圧力が強く、北ダラスでは中央値が前年比16.8%下落した。一方、郊外のフリスコやセリーナなどでは人口流入と雇用拡大が支えとなり、相対的に価格下落幅は小さい。

新築市場ではビルダーが最大2万ドルの割引や金利引き下げを提供するなど、在庫消化を急ぐ動きが顕著になっている。

市場は「調整局面」ながらも長期的な需給バランスは健全である。ダラス・フォートワース圏は全米でも人口増加率と雇用成長がトップクラスであり、2026年以降は再び緩やかな価格上昇に転じるとの見方が多い。短期的には買い手優位の状況が続くだろうが、高い経済基盤と人口増が下支えするため、これは「過熱からの健全な調整」と見ることができる。

参考出典:
「Mortgage Rates Drop Near 3-Year Low, Opening Door For Homebuyers But Few Are Walking Through」(Redfin News)https://www.redfin.com/news/housing-market-update-mortgage-rates-drop-buyers-stay-on-sidelines/
「Dallas Housing Market: Prices, Trends, Forecast 2025-2026」(Norada Real Estate)https://www.noradarealestate.com/blog/dallas-real-estate-market/
「Here’s Why DFW Area Home Prices Could Keep Dropping in 2025」(Home Buying Institute)https://homebuyinginstitute.com/mortgage/dallas-home-price-movement/
「North Dallas, TX Housing Market」(Redfin)https://www.redfin.com/neighborhood/548427/TX/Dallas/North-Dallas/housing-market

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