ダラスのマルチファミリー住宅市場とS2キャピタルの新ファンド



ダラスはテクノロジーや医療、物流、金融など多様な産業が急成長しており、人口流入が活発で賃貸住宅の需要が非常に高い地域です。2024年末までのデータでは、ダラス・フォートワース(DFW)エリアの集合住宅市場は前年比で販売が大幅に増加し、賃貸需要が堅調に推移しています。

▼ダラスのマルチファミリー住宅市場の現状と数字

2023年には新築マルチファミリー物件の年間完成戸数が38万5,000ユニットに達し、空室率は6.6%とパンデミック前の水準に近づいていますが、依然として2013年から2019年の平均7.2%を下回る低水準です。2025年には家賃が全国平均で約2.6%上昇し、空室率は5%未満に低下する見込みで、供給過剰の懸念はあるものの、人口増加に伴う需要の強さが市場を支えています。

また、ダラスでは2022年をピークに新築着工数は減少傾向にあり、直近16か月のうち13か月で前年比二桁減となっています。これは供給圧力の緩和につながり、長期的には空室率の安定や家賃の上昇を後押しすると見られています。

若年層、特にミレニアル世代やジェネレーションZは住宅購入が難しいため賃貸市場に長期滞在する傾向が強く、こうした人口動態もダラスのマルチファミリー住宅需要を支える要因となっています。



▼S2キャピタルの新ファンドと投資戦略

ダラス拠点の不動産投資マネージャーS2キャピタルは、最新の投資ファンド「S2リアルエステートファンドII LP」を3億7,300万ドル(約597億円)でクローズしました。これは同社の初号ファンドを上回る規模で、テキサス州をはじめアリゾナ、コロラド、フロリダ、テネシー、ジョージア、カロライナズなど成長著しいサンベルト地域の経営困難なマルチファミリー物件に投資します。

S2キャピタルは、パフォーマンスが低迷している物件を改修し運営効率を高めるバリューアッド戦略を採用。すでに14物件に投資済みで、金利上昇や供給過剰による市場の混乱を好機と捉え、迅速に価値向上を図っています。投資家は米欧の機関投資家や年金基金、ウェルスマネジメント企業など多様で、成長市場に対する高い信頼を示しています。

ダラスのマルチファミリー住宅市場は、人口流入と産業成長を背景に賃貸需要が強く、空室率の低下や家賃上昇により安定した投資環境が整いつつあります。2025年の家賃は全国平均で約2.6%上昇し、空室率は5%未満に低下する見込みです。こうした好環境の中、S2キャピタルの3億7,300万ドルファンドは、ディストレス物件の改修を通じて価値創造を目指し、成長市場での集合住宅投資を加速させる重要な資金源となっています。今後もダラスを中心としたサンベルト地域のマルチファミリー市場の動向に注目が集まります。

参考記事:Targeting Distressed Multifamily Opportunities, Dallas’ S2 Capital Closes New $373M Fund

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