ダラスの「ロレックス時計学校」が示すAI時代の「手に職」戦略



ロレックスがダラスに学校を作った理由

スイスの高級時計ブランド「ロレックス(Rolex)」は2023年、テキサス州ダラスに「Rolex Watchmaking Training Center(RWTC)」を開設しました。

目的は、次世代のロレックス認定時計技師の育成です。アメリカでは機械式時計を扱えるプロの時計技師が2,000人未満とも言われており、近年の時計人気の再燃に対して修理・メンテナンス人材が決定的に不足しています。この人材不足を解消するため、ロレックスは自社主導の教育機関をダラスに設立しました。


授業料無料・18カ月の専門プログラム

RWTCは授業料無料の18カ月プログラムで、ダラス・アップタウンにあるロレックスサービスセンター(2601 N Harwood St)内に設置されています。

プログラム概要
・期間:18カ月(フルタイム)
・前半:機械式時計の理論、分解・組立、精度調整など基礎技術
・後半6カ月:ロレックス時計の修理・アフターサービス実務

さらに
・授業料無料、工具・教材はロレックス提供、生活補助:月額1,800ドル支給など

最終試験はスイス・ジュネーブで行われ、渡航費もロレックスが負担します。修了後はロレックス認定ウォッチメーカーとなり、全米のロレックスサービス拠点でのキャリアが期待できます。


競争率はハーバード並み

RWTCは2024年9月に最初のクラスが開講し、現在は年2回(3月・9月)の入学体制となっています。定員は1クラス約15人と非常に少なく、初年度は約400人、翌年は560人以上が応募。合格率は4〜5%台とされ、「ハーバード並みの狭き門」とも紹介されています。現在は2期生まで合わせて約50人が在籍しています。


未経験から年収約95,000ドル

RWTCは業界経験を必須としていません。

応募条件は高校卒業、細かい作業への適性、18カ月フルタイム通学可能などで、未経験からでも挑戦できます。修了後のロレックス認定ウォッチメーカーの平均年収は約95,000ドル(約1,470万円)とされ、高技能職として注目されています。


ダラスという立地の意味

RWTCはダラス・アップタウンのロレックスサービスセンター4階に設置され、教室と実際の修理現場が一体となった形で運営されています。ダラスは全米の航空・物流ネットワークの中心に位置するため、ロレックスのサービス網を支える人材ハブとして合理的な立地です。なおロレックスは2001年にペンシルベニア州でLititz Watch Technicumを設立していましたが、同校は2025年に閉鎖。現在はダラスのRWTCが米国時計技師育成の中核拠点となりつつあります。


AI時代の「手に職」モデル

生成AIの普及によりホワイトカラー職の一部は代替圧力を受けています。一方で、精密な手作業と長期訓練が必要な時計技師はAIが代替しにくい職業の一つです。ロレックスがダラスで展開する授業料無料かつ高待遇の時計学校は、

・企業が自前で技能人材を育てる
・AI時代におけるクラフトマンシップ職の再評価

という新しいキャリアモデルを象徴する取り組みと言えるでしょう。

参考出典:Rolex Watchmaking Training Center 公式サイト National Jeweler aBlogtoWatch Fortune Los Angeles Times

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