テキサス州の大型新法群―詳細データと独自解説【2025年9月施行】



2025年9月1日、テキサス州は過去最大級と言われる約830件の新法を一斉に施行しました。議会通過率は14%と低めながら、州の教育、社会、安全、インフラなど幅広い分野に影響を及ぼす重要法案が目白押しです。ここではその中核となる法律を詳しい数値データとともに取り上げ、米国他州や日本の状況と比較しながら、独自の視点も加えて解説します。

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1. 予算規模と教育投資

・2年予算総額は3,380億ドル(約46兆円)、うち70%以上が教育・健康福祉に充当。

・公立学校向け新規資金は85億ドル超、そのうち約49億ドルは教員給与向上に。

・10,000ドル超の税金を一人当たりで投入する教育費用は米国最大規模の一つ。

・新設「公立→私学利用バウチャー制度」(SB2)が2026-27年度に開始予定。対象生徒数は最大100万人超の見込み。

2. 教育制度の大転換

・SB10:州公立学校5.5百万生徒に「十戒」の掲示義務(16インチ×20インチ以上のポスター)。

→ 現在11学区が連邦裁判所で執行停止申立中。根拠は「政教分離原則違反」疑惑。最高裁まで争われる可能性。

・SB12:K-12学校での多様性推進政策禁止。雇用の際に性別、性的指向、人種等を考慮禁止。生徒クラブも制限。

・SB13:公共図書館の蔵書に親機関の監査権強化。盗書や有害コンテンツ対策と称するが、検閲懸念も。

3. 住宅政策の革新(SB15)

・新築住宅の最低敷地面積を「3,000平方フィート」(約83坪)まで縮小許可、従来の5,000〜7,500平方フィートから大幅ダウン。

・テキサス州の住民増加にリアルタイムで対応。これにより住宅供給増・価格高騰抑制が期待され、全国が注目中。

4. 社会安全と規制強化

・HB33:州内全警察に学校等の危機対応計画の年次審査を義務化。射撃事件対応訓練と情報公開強化を求める。

・SB835「トレイ法」:性的虐待被害者を沈黙させるNDA(秘密保持契約)を禁止。新法違反は刑事罰対象に。

・SB9:暴力・再犯者の保釈条件厳格化。裁判官権限見直し、被害者保護を重視。

・HB1443:児童型性玩具の所持・販売禁止(最大20年刑罰付き)。

・SB2024:未成年対象の電子タバコ規制強化。マーケティングも大幅制限。

5. 新設規制・社会的課題

・SB17:敵対国(中国・北朝鮮・ロシア・イラン)国籍者の土地取得禁止。

・HB46:慢性痛、脳損傷向けに医療用大麻プログラム拡充、蒸気吸入型の処方認可。

・HB272:クレジットカード詐欺訴追強化。

・HB581:未成年対象AI生成性的画像の規制。



▼独自見解と日本への示唆

1.教育改革の深化

多様性規制や宗教教育強化は、社会の価値観対立を顕著化させており、日本でも「教育の中立性・多様性」は今後議論激化必至。州レベルの動きを注視しつつ「地方自治体の自主性」と「社会合意」を模索すべき。

2.住宅政策の先進性

最低敷地規制緩和は全国・国際的にも注目。人口増や都市スプロール問題で苦戦する日本都市にとってもヒントが多い。多様な住環境づくりとコスト抑制の両面を考慮した合理的アプローチが不可欠。

3.安全対策の厳格化

事件被害対応の強化や被害者保護法(「トレイ法」など)は、警察・法制度の透明性向上に寄与。AI生成物・未知技術規制も含め、技術革新に対応した柔軟な規制設計が求められる。

4.全面禁止 vs. 規制強化の二極化

薬物・土地権規制などで「全面禁止」を唱える勢力と「現実的な規制強化」を主張する勢力が対立。政策決定の透明性と影響分析の深化を通じ、合理的かつ公正な法運用が向上の鍵。

今回の新法群は単なる法改正にとどまらず、米国でも極めて保守的かつ実務重視の政治風潮や社会価値観を反映しています。情報の多元的理解と問題意識が不可欠であり、ジェフィロは日本の政策・企業・市民に向けた的確な比較分析と最新情報発信に引き続き力を入れていきます。

参考記事:
More than 800 new laws went into effect in Texas on Sept. 1. Here are some of the significant ones.

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