CBDとTHCの境界線ー日本とテキサスの動き
/2025年9月、テキサス州のグレッグ・アボット知事は、THC(テトラヒドロカンナビノール)を含むヘンプ製品に対して、より厳格な規制を行政命令で実施する準備を進めています。これは州議会が複数回の特別会期でも規制法案を成立できなかったことを受け、安全かつ現実的な管理体制構築を目指す動きです。
▼THC含有ヘンプとCBD製品の違い(基礎解説)
「ヘンプ」とは産業用大麻の一種で、主にCBD(カンナビジオール)とTHCという二つの成分に分けられます。CBDは精神作用(陶酔感)を伴わず、鎮痛やリラックス効果を目的に使用されることが多く、日本でも健康補助的な商品として知られています。一方、THCはマリファナに含まれる精神活性物質であり、陶酔効果があるため日本では禁止されています。
テキサス州では、CBD製品は一定の規制下で合法的に流通していますが、それに含まれるTHC成分が基準(0.3%以下)を超えたり、合成的に作られたデルタ8 THCなどの「合成カンナビノイド」が含まれる製品は問題視され、規制の強化対象となっています。
▼実施予定の規制内容
アボット知事は以下のような消費者保護と安全確保を目的としたルール導入を検討中です。
・21歳未満への販売禁止
・1回摂取あたりのTHC成分上限を0.3%または3mg以下に設定
・合成カンナビノイド(デルタ8 THCなど)含有製品の販売禁止
・年齢確認システムの義務付け
・第三者機関による成分検査および正確な表示義務
・店舗の学校から一定距離以上の立地義務
・事業者の登録料および手数料の増額
これらは消費者の安全を最優先にした規制であり、輸入業者・製造業者・販売者はこれに対応した体制整備が求められます。
▼業界と議会の対立構図
テキサス州には約6,000~8,000のヘンプ関連事業者がおり、多くは消費者安全対策には賛成していますが、州上院の一部指導部はTHC含有製品を全面禁止にすべきとの強硬姿勢を維持しています。2024年および2025年の議会では、全面禁止法案や強化規制案が何度も審議されましたが、成立には至らず議論が継続中です。
業界団体テキサス・ヘンプ・ビジネス・カウンシル(THBC)は、既存の成分検査・認証・ラベル表示制度があること、21歳未満の販売禁止や子ども安全包装の義務付けなど合理的な規制の必要性を訴えています。全面禁止だけでは市場の混乱や違法流通の増加を招く恐れがあるため、バランスのとれた規制が求められているのが現状です。
▼規制の背景と今後の展望
この規制強化の動きは、2018年の連邦農業法(Farm Bill)でヘンプの合法化が進んだ後、予想外に「高THC含有ヘンプ製品」が市場に蔓延したことを受けています。サウスダコタ州やカリフォルニア州など他の州に先立ち、テキサス州は独自の包括的規制を打ち出そうとしています。
アボット知事は子どもたちの安全確保と大人の自由の調和を目指しており、行政命令により年齢制限や品質管理、販売条件など詳細なルールを設ける予定です。これにより、消費者の安全性を高めつつ、業界の持続可能な成長を支える枠組みが構築されることが期待されます。議会での規制法案成立が長引く中、知事の行政命令による規制措置は州内産業と消費者に大きな影響を与えるため、最新動向や対応策に関する情報収集が重要となります。
このように、テキサス州におけるTHC含有ヘンプ製品の規制は、業界・消費者・行政の三者が関わる複雑な課題です。日本でもCBDとTHCの違いが直近で数多く報道されています。米国法の背景も踏まえ、今後の施策や市場の動きを注視する必要がありそうです。
参考記事:
Texas Governor Reportedly Prepares Executive Order to Regulate Hemp THC Products
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