テキサス・インスツルメンツ、9兆円の半導体投資でアメリカ製造業強化へ



Photo by Texas Instruments

史上最大規模の半導体投資を発表

ダラスを拠点とするテキサス・インスツルメンツ(TI)は6月18日、半導体分野への600億ドル(約9兆円)という大規模投資を発表しました。

この投資は米国における基盤的半導体分野では過去最大規模とみられ、全米で6万人以上の雇用創出を支援する計画です。投資は3つの拠点に配分され、テキサス州シャーマンに400億ドル(約6兆円)、同州リチャードソンに60億ドル(約9,000億円)、ユタ州リーハイに残りの投資額が充てられます。

シャーマン・キャンパスが中核拠点に

最大の投資対象となるシャーマンは、オクラホマ州境近くに位置する人口約4万6,000人の都市で、1,200エーカー(約485万平方メートル)の巨大複合施設が建設されています。製造スペース約140万平方フィート(約13万平方メートル)を含む数百万平方フィートの施設では、最大3,000人の雇用が予定されています。第1工場は3年間の建設を経て完成し、現在設備導入と従業員配置が進行中で、今年後半には半導体出荷を開始予定です。第2工場も外装工事が完了しており、順調に計画が進んでいます。



アメリカの技術革新を支える戦略

ハビブ・イラン社長兼CEOは、「TIは、ほぼすべての電子システムに不可欠なアナログおよび組み込み処理チップを提供するため、信頼性が高く低コストの300mmウェハー製造能力を大規模に構築している」と述べています。

同社の技術はアップル、フォード、メドトロニック、エヌビディア、スペースXなど米国の主要企業に採用されており、自動車からテレビまで、あらゆる電子機器に使用される重要なコンピューターチップの国内生産体制強化により、サプライチェーンの安定性向上と技術的優位性の確保が期待されています。

競合投資とテキサス州・ダラス地域への影響

シャーマンでは、TI以外にも台湾のグローバルウェーハーズが75億ドル(約1兆1,250億円)を投資し、シリコンウェーハー工場を開業するなど、半導体製造拠点としての集積が進んでいます。TIの投資に加え、グローバルウェーハーズの投資も含めると、シャーマン地域だけで4,500人以上の直接雇用が創出される見込みです。

この大規模投資により、ダラス・フォートワース大都市圏は米国の半導体製造ハブとしての地位を確立し、テキサス州の「エネルギー州」から「テクノロジー州」への転換を加速させることになります。高技能職の創出は地域経済の活性化、住宅需要の増加、関連サービス業の発展をもたらし、将来的にはシリコンバレーに匹敵する技術革新拠点としての発展が期待されています。

ハワード・ルトニック米商務長官も「TIとのパートナーシップは今後数十年にわたって米国の半導体製造を支援する」と高く評価しており、アメリカの半導体製造業の国内回帰と技術革新の加速を象徴する投資となっています。

参考記事:Texas Instruments

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