トヨタの2025年5月販売実績:グローバル・地域・モデル別分析



▼記録的な5月を迎えたトヨタ

トヨタ自動車株式会社は2025年5月、世界販売台数が前年比6.9%増の89万8,721台となり、新記録を達成しました。この堅調な販売は、北米、中国、日本での高い需要によって牽引されました。また、2025年の1月から5月までの累計販売台数は460万台となり、前年同期比8.4%増加しています。

しかし、販売が好調な一方で、同月のグローバル生産台数はわずかに減少しており、これはサプライチェーンの課題や需要変動への戦略的な対応を示唆しています。

▼ハイブリッド車の優位性とBEV論争

トヨタの成功は、ハイブリッド技術への一貫した取り組みによるものです。多くの自動車メーカーがBEV(バッテリー式電気自動車)への転換を急ぐ中、トヨタは特に充電インフラが未発達な市場でハイブリッド戦略を展開し、消費者からの高い支持を得ています。アナリストは「トヨタのBEV懐疑的な姿勢が成長を妨げていない」と指摘し、ハイブリッド車が販売の柱となっています。

▼貿易関税の影響

自動車業界は2025年、米国政府による新たな関税導入によって大きな逆風に直面しました。トヨタは4月と5月だけで13億ドルの追加コストが発生し、これが今期の営業利益が20%減少するとの見通しの主因となっています。輸入車や主要部品に25%の関税が課され、生産コストが増加し、自動車メーカーや消費者にとって不透明感が高まっています。

価格と収益性: トヨタは当面は追加コストを吸収する方針ですが、高級車種などでは価格上昇が見込まれます。コローラなどの廉価車は価格上昇の影響を受けやすく、高級車は相対的に影響が小さい傾向です。

地域生産: サンアントニオ工場に代表される「現地生産・現地販売」戦略により、関税の影響を一部緩和しています。ただし、米国内組立車でも輸入部品を使う場合は影響を受けます。

市場の不透明感: 貿易政策の不透明さがトヨタの戦略立案を複雑にし、マージンを圧迫。消費者向けの割引やインセンティブも減少しています。

グローバルな波及効果: ドル安による為替変動も、米国での利益を円に換算する際に収益を圧迫しています。



▼地域別ハイライト

【北米】
カナダ: トヨタカナダは12.6%の前年比増加を記録し、電動車(ハイブリッド含む)が新記録を達成。トヨタブランドの47.1%、レクサスの57.1%が電動車となりました。
北米全体: ハイブリッド車とSUVへの強い需要が、トヨタの記録的な販売を支えています。

【インド】
・トヨタキルロスカーモーターは5月に30,864台を販売し、前年比22%増加。
・国内販売は29,280台、輸出は1,584台。
・SUVとMPVが主な成長ドライバーで、年度初め2か月間の合計販売台数は34%増。
・HyRyderが7,573台(前年比93.88%増)でトップ、続いてHycross、Taisorが続きます。

【その他の市場】
・日本と中国もグローバル販売の成長に大きく貢献。
・フォルクスワーゲングループは5月の新たな数字を発表せず、現代グループはKiaの好調により0.9%の微増となっています。

▼モデル別の動向

【インド】
・HyRyder: 7,573台(前年比93.88%増)、ラインナップの25.86%を占める。
・Hycross: 5,243台(前年比18.86%増)。
・Glanza: 4,753台(前年比5.22%減)。
・Innova Crysta: 3,639台(前年比12.04%減)。
・Taisor: 3,035台(前年比39.22%増)。
・Fortuner: 2,571台(前年比6.15%増)。

【カナダ】
・ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が複数のモデルで記録的な需要を記録。

▼主なポイント

グローバル販売記録: 北米、中国、日本、インドでの好調により、トヨタは5月に記録的な販売を達成。
ハイブリッド車の強み: 業界のBEVシフトの中でも、ハイブリッド車が成長を牽引。
関税の影響: 米国の新関税により、2か月で13億ドルの追加コストが発生し、今期営業利益が20%減少すると予測。
地域ごとの成長: インドとカナダで特に顕著な成長、電動車とSUVが牽引。
生産の課題: 販売は好調だが、グローバル生産は減少し、サプライチェーンの課題が浮き彫りに。
モデルの多様性: SUVやMPVを中心に幅広いラインナップが消費者に支持されています。

▼まとめ

トヨタは北米市場の中核拠点として、2017年に北米本社をカリフォルニア州からテキサス州ダラス郊外のプレイノに移転しました。これにより、ダラス・フォートワース都市圏はトヨタの経営・開発・販売戦略の重要拠点となっています。テキサス州は全米でも経済成長率が高く、企業誘致や物流インフラが充実しているため、多くのグローバル企業が拠点を置く地域です。

また、テキサス州は自動車の需要が高く、ピックアップトラックやSUVの人気が根強いことも、トヨタの北米戦略において大きな意味を持っています。サンアントニオ工場での現地生産も、関税リスク低減や地域経済への貢献という点で重要な役割を果たしています。

今後も、テキサス州ダラスをはじめとする米国南部の成長市場を軸に、トヨタは北米でのプレゼンス拡大とグローバル競争力強化を図っていくでしょう。

ソース:Dallas Business JournalToyota

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