テキサスや南部が注目される時代へ ウォール街の地殻変動を読む
/最近、日本の経済メディアでも「米国南部」が頻繁に取り上げられるようになりました。かつてはニューヨークやカリフォルニアといった東西の大都市圏が米国経済の中心として語られてきましたが、今や南部の存在感が急速に高まっています。日経新聞の記事「ゴールドマンは南を目指す ウォール街、崩れる一極集中」から、その背景と現地の変化を読み解きます。
▼ウォール街の雄も南へ。ゴールドマン・サックスのダラス拠点
記事によれば、ゴールドマン・サックスは2017年からテキサス州ダラスの拠点強化に本格的に乗り出し、社員数はわずか数年で900人から4700人へと5倍に増加。2028年には新オフィスに5000人が勤務する計画です。ニューヨーク本社の規模に迫る勢いで、米国内第2の拠点となっています。
この流れはゴールドマンだけではありません。ウェルズ・ファーゴやチャールズ・シュワブなど大手金融機関も続々と南部に進出。証券取引所もテキサスに新設される動きがあり、ニューヨークの一極集中が崩れつつあります。
▼なぜ南部が選ばれるのか?
・巨大な経済力とビジネス機会
テキサス州のGDPは2.7兆ドルで全米2位、フロリダ州も1.7兆ドルで4位。世界の国に当てはめてもテキサスはイタリアやカナダ以上の規模です。
・規制の緩さと税制の優遇
テキサスやフロリダには個人所得税がなく、企業誘致のための優遇策も豊富。ビジネスにとって魅力的な環境が整っています。
・優秀な人材の確保
多くの有力大学が集まり、地元出身の若い人材が南部でキャリアを築ける環境が整ってきました。
▼データで見る南部の台頭
2019年から2024年にかけて証券業の雇用増加率を見ると、テキサスやフロリダ、ノースカロライナ、ジョージアといった南部諸州がニューヨークの2~3倍の伸びを示しています。かつて全米の証券業界の3人に1人がニューヨーク市で働いていた時代から、今やそのシェアは半減し18%にまで落ち込みました。
ゴールドマンは南を目指す ウォール街、崩れる一極集中 - 日本経済新聞より
▼南部進出の明暗
一方で、南部の保守化や反ESG(環境・社会・企業統治)政策など、政治的なリスクも指摘されています。テキサス州では妊娠中絶禁止や多様性重視施策の否定が進み、金融機関のビジネスにも影響が出ています。ブラックロックが州年金との取引を再開する一方で、政治の意向がビジネスを左右する不安定さも感じられます。
▼コメント欄で見られる声
「南部の成長は税制や規制の緩さだけでなく、生活コストの低さも大きい」
「ウォール街やシリコンバレーの時代は終わり、南部が新しい経済の中心になるのでは」
「政治的なリスクはあるが、それを上回る経済的メリットが南部にはある」
「日本企業も進出を検討すべきタイミングかもしれない」
米国経済の重心が南へ。これは一時的なトレンドではなく、構造的な変化と言えるでしょう。今後も南部の成長と、それに伴う社会・政治の変化から目が離せません。
ゴールドマンは南を目指す ウォール街、崩れる一極集中 - 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0501R0V00C25A7000000/?n_cid=NMAIL006_20250711_A
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