テキサス州、7.6兆円の固定資産税減税案を住民投票へ



テキサス州では11月の選挙で、住宅所有者と企業を対象とした大規模な固定資産税減税案について有権者による承認投票が実施されます。承認されれば、住宅所有者は学区に支払う固定資産税が軽減され、特に65歳以上の高齢者や障害者はさらに大幅な減税恩恵を受けることになります。

▼減税の規模と財源

テキサス州議会は今後2年間で510億ドル(約7兆6,500億円)という巨額の予算を固定資産税減税に投じる計画です。この財源は、新型コロナウイルス感染症パンデミック期間中のインフレーションと連邦刺激策による一度限りの予算余剰金を活用したものです。

グレッグ・アボット州知事は減税推進の立場から、「テキサス州議会がこれほどまでに固定資産税軽減に多額の資金を配分したことは過去にない」と述べ、有権者に承認を呼びかけています。

▼具体的な減税内容

住宅所有者への恩恵

基本減税

・ホームステッド免税額を10万ドル(約1,500万円)から14万ドル(約2,100万円)に引き上げ
・標準的なテキサス州住宅(評価額30万2,000ドル、約4,530万円)の所有者で年間約490ドル(約73,500円)の学区固定資産税を節約

高齢者・障害者向け追加減税

・65歳以上または障害者向けの別途ホームステッド免税額を1万ドル(約150万円)から6万ドル(約900万円)に大幅引き上げ

企業への恩恵

・企業在庫に対する免税額を現行の2,500ドル(約37.5万円)以下から12万5,000ドル(約1,875万円)以下に大幅拡大
・学区、市、郡、その他の課税団体からの在庫税が対象

地方自治体への影響と制約強化

州政府は学区の減収分を補填しますが、市や郡などの他の課税団体は税率引き上げか歳入減少への対応を迫られます。

議会は地方政府の課税権限にも新たな制約を導入しました:

・自然災害対応を理由とする固定資産税引き上げ権限の制限強化
・学区の税率引き上げ申請能力の制限
・税率引き上げや債券発行の住民投票時に「これは増税です」という文言の明記義務化



財政持続性への懸念

左派系政策研究機関「エブリー・テキサン」の財政政策専門家シャノン・ハルブルック氏は、将来の財政状況について警告を発しています。連邦刺激資金はほぼ使い切られ、テキサス州経済も減速傾向にあります。

ダラス連邦準備銀行は5月の報告書で、トランプ政権の関税政策の不確実性、移民流入の減少、原油価格の下落、連邦支出削減などが州経済に悪影響を与える可能性を指摘しました。

「次回は余剰資金がそれほど潤沢ではないでしょう。議論の焦点は『この余剰収入をどう使うか』ではなく、『厳しい財政環境にどう対処するか、何を削減するか、どう進むか』になるでしょう」とハルブルック氏は述べています。

見落とされた賃貸住宅居住者

今回の減税案では、テキサス州の980万人の賃貸住宅居住者は直接的な恩恵から除外されています。減税推進派は賃貸住宅居住者も学区税率の引き下げから間接的に恩恵を受けると主張していますが、住宅所有者や企業のような直接的な税軽減措置は提供されていません。

今後の展望

これらの減税措置はテキサス州憲法の改正を伴うため、11月の住民投票での承認が必要となります。承認されれば、テキサス州史上最大規模の固定資産税減税が実現する一方で、将来の財政運営に大きな影響を与える可能性があります。

州議会は2年前と比較して小規模な減税にとどめましたが、それでも巨額の予算投入となっており、長期的な財政持続性についての議論は今後も続くと予想されます。

参考記事:Voters will have final say on billions of tax cuts for Texas homeowners, businesses 

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