ダラスで快適に暮らすにはいくら必要？年収10万ドル超が必要になった背景

ダラスは長く「物価が安く、コスパの良い大都市」として人気を集めてきましたが、ここ数年で状況は大きく変化し、「快適に暮らすには年収10万ドル以上が必要」と言われる都市になりつつあります。

以下では、どの費目がどのように変わり、なぜ“お得なダラス”ではなくなってきているのかを整理します。

▼ダラスで「快適に暮らす」ための必要年収

最近の調査では、ダラス・フォートワース都市圏で「貯蓄もしながら快適に暮らす」ために必要な年収は、単身で少なくとも約10万7,000ドルとされています。これは、生活費50％・ゆとり支出30％・貯蓄・返済20％という家計ルールを前提に、家賃や光熱費、食費、交通費などを総合的に試算した数字です。

家族構成別に見ると、必要年収はさらに跳ね上がります。

・2人成人・子どもなし世帯：約13万8,000ドル
・共働き＋子ども1人世帯：約18万4,000ドル
・共働き＋子ども3人世帯：約26万5,000ドル

一方で、DFWの世帯年収中央値は7万ドル台とされており、多くの世帯は「統計上の快適ライン」より下の水準でやりくりしているのが実態です。

1. 住宅価格と家賃の急騰

ダラスの「安さ神話」が崩れた最大の要因が住宅費です。

・2020年以降、DFWの住宅価格中央値は約5年で3〜4割前後上昇し、2024年時点で2020年比約38％増というデータもあります。

・ダラス市の売買価格中央値は約47万ドルと、もはや“激安”とは言えない水準に。

賃貸市場も同様で、2020年以降の数年で平均家賃は数百ドル単位で値上がりしています。

・2025年時点で、ダラス市内の平均家賃はおおよそ

　→1ベッド：月1,500〜1,600ドル前後

　→3ベッド：月3,000ドル台半ばという水準が目安とされ、「家賃が安い都市」というイメージは薄れています。

・住宅供給は増えているにもかかわらず、人口流入と所得の高い層の流入で、家賃・価格とも高止まりが続いています。

ダラス・フォートワースはここ数年、全米でも比較的インフレ率が高いエリアです。

・2023〜2024年にかけて、DFWの消費者物価指数（CPI）は主要23都市圏の中でトップクラスの上昇率を記録し、年間5％超のインフレとなった時期もあります。

・2025年夏時点でも、直近1年のCPIは約0.9％増、食料は2％増で、特に外食費が4％超上昇するなど、日常的な支出がじわじわ重くなっています。

電気料金やガスなどエネルギー価格も家計を圧迫しています。・光熱費は全米平均と比べて約15％前後割高との試算もあり、「家賃はまだしも、電気代が高くて驚いた」という声が多い要因です。

かつてダラスが「生活費が安い」と言われていたのは、

・税金（州所得税なし）
・住宅価格・家賃の安さ
・土地の広さと開発余地
・給与水準に対して相対的に低い物価

といった条件が揃っていたためです。

しかし、2020年以降の数年で以下の構図に変わりました。

1.人口・企業の急増
全米からの移住と企業進出で、DFWの人口と雇用はここ数年で20％以上拡大。IT・金融・物流など高所得の職種も増え、高所得層の流入が住宅価格を押し上げました。

2.住宅供給は増えても、需要がさらに上回った
新築戸建や集合住宅は全米トップクラスの供給量を誇りますが、それ以上に需要が膨らんだため、価格・家賃の上昇が続きました。

3.インフレと賃金上昇のアンバランス
賃金は伸びているものの、生活費の上昇ペースの方が速く、「名目年収は上がったが、実質的な余裕は減った」という状況に。

その結果、「ダラスは今でも沿岸大都市よりは安いが、かつてのような“圧倒的にお得な都市”ではない」という評価に変わりつつあります。

とはいえ、ニューヨーク・サンフランシスコ・ロサンゼルスなどと比べれば、ダラスの生活コストは依然として低めです。

・住宅価格・家賃、外食費、通勤時間のバランスを総合すると、「コスパ重視で大都市圏に住みたい層」にとっては、まだ魅力ある選択肢であることに変わりはありません。

・また、郊外（ルイスビル、フリスコ、マッキニーなど）のエリアを選べば、中心部よりも家賃を抑えつつ、良好な生活環境を確保できるケースも多くあります。

重要なのは、「かつての安いダラス」のイメージではなく、2025年時点のデータに基づいた生活費と必要年収を把握したうえで、エリアや住まい、ライフスタイルを設計することと言えます。