ダラス拠点のComerica銀行、約1.1兆円でフィフス・サード銀行に買収へ



2025年10月、ダラスに本社を構える老舗地方銀行Comerica(コメリカ)は、シンシナティ本拠のFifth Third Bancorp(フィフス・サード銀行)による約109億ドル(約1.1兆円・全株式交換)での買収に基本合意し、業界・地域経済に大きな波紋を呼んでいます。プレスリリースはこちら

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▼買収の背景と合併後の規模

この買収により、2行は合計2880億ドル超の総資産を有する全米第9位の巨大銀行グループとなる見通しです。Comerica株主は1株につきFifth Third株1.8663株を受け取る仕組みで、直近相場値換算で約20%の高額プレミアム(1株82.88ドル)が付きました。統合会社の持株比率は、Fifth Third株主73%、Comerica株主27%と発表されています。

▼会社・市場戦略と拠点再編

合併により、Fifth Thirdは従来強みを持っていたミッドウェストに加え、成長著しいテキサス・サンベルト・カリフォルニア・アリゾナなど南西部にも事業基盤を一気に拡大します。特にダラス、ヒューストン、オースティンの市場シェア増強と2029年までにテキサス州内に150の新支店を展開する計画が明かされています。2030年には新銀行の半数以上の支店が南部諸州に配置される見通しです。



▼経営体制と今後の見通し

合併後はFifth Third側の経営を中心に、Comericaの現CEOカート・ファーマー氏がバイスチェア、同銀行取締役3名がFifth Third取締役に参画予定。規模拡大による効率化・デジタルサービス強化に加え、資産運用・商業決済など2つの年10億ドル規模リカーリング型事業のさらなる拡張へ―地域雇用やサービス内容にも広く影響するとみられます。なお規制や株主承認を経て2026年第1四半期の完了が見込まれています。

▼テキサス経済・地域への影響

今回の買収は、同時期進む他のテキサス地銀M&A(例:ヒューストン発VeritexやVistaなどの買収)とも連動し、全米・州経済での地方銀行再編の一大波となっています。ダラス本社銀行が地域外資本に吸収されることで、地元雇用・拠点の維持、融資体制や金融サービスの変化にも注視が必要です。一方で、最新デジタル銀行サービスや大手同士の融合がもたらす利便性、事業基盤強化による地域経済効果には期待の声も上がります。

近年では、テキサス証券取引所の設立やナスダックのダラス開設ニュース、ゴールドマンサックス全米でニューヨークに匹敵するダラス拠点の建設(2027年完成)と金融・証券分野の動きも活発化しており、銀行業界では買収統合も進行しています。今回の取引のような大型取引にて、今後さらに金融・証券分野での再編が進む可能性があります。

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